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自家製カマンベールチーズはつくれるのか? | 危険な発酵学#01

自家製カマンベールチーズはつくれるのか? | 危険な発酵学#01

発酵は最も美しく、
最も危険な調理法である。

料理は経験だ。

レシピをすみずみまで読んでも料理の腕が上がるわけではない。何千年も前から人間はあらゆる料理を試行錯誤してつくり上げてきた。

微生物の力を借り、あらゆる食材を変化させる「発酵」という調理法。

炒めるわけでも茹でるわけでもなく、ただじっと微生物の働きを見守るこの行為は、人類が途方もなく長い期間を経て獲得した極上の調理法でもあり、同時に最も危険な調理法ともいえる。発酵と腐敗は常に表裏一体なのだ。

そんな人類がいくつもの困難を乗り越えて習得した発酵食品を実際につくり、その険しき道のりを追体験するこの企画。

第1回目は、自家製カマンベールチーズ。今やコンビニの棚にも並べられているほどポピュラーなチーズの外側には、広大なカビの世界が広がっていた。

そもそもカマンベールチーズとは何者なのか。

白カビチーズの代名詞でもあるカマンベールチーズ。
その発祥は、1791年、フランス北部ノルマンディ地方のカマンベール村だといわれている。

ビールの誕生が紀元前8000~4000年までさかのぼるといわれているから、長い人類の発酵の歴史からみれば、そんなに古くはない。だけど、カマンベールの原型といわれているブリーチーズの誕生はおよそ1000年前以上。ブリーチーズとカマンベールチーズの大きな違いは、サイズだという(ブリーチーズのほうがはるかに大きいとか)。

そこで今回は、ブリーチーズを元にカマンベールチーズをつくり、その歴史のはざまを追ってみた。


①チーズからヨーグルトをつくる。

チーズからヨーグルトじゃなくて、ヨーグルトからチーズでしょ。
と思ったかたもいるだろうけど、ちゃうんです。いや、ちゃうくはないです。
ヨーグルトがないとチーズはできない。まずはヨーグルトつくりから。

必要なのは、加熱殺菌されていないブリーチーズと、低温殺菌牛乳。

コンビニで売られているカマンベールチーズは、出荷前に白カビの繁殖を止めるため加熱殺菌されているものが多い。殺菌されていると、もちろんカビが繁殖することができないため、チーズをつくることはできない。
また低温殺菌牛乳には、生きた乳酸菌が残っていて、ヨーグルトつくりに向いているという。そこで今回は、成○石井(写真に堂々と出てるけど)に売られていたブリーチーズと低温殺菌牛乳を使用した。チーズが加熱殺菌されているかの見極めはまさに目利き。これは繁殖するだろうという直感だけが頼りだ。

まずは、牛乳500mlに対し、ブリーチーズを30gほどを細かく刻んでいく。
本当はもっと細かく刻んだほうが良いのだろうけど、ここはご愛嬌。
そしてここで一番の注意点。
発酵食品をつくる時はできる限り清潔でないと、いろんな雑菌が混じってしまい腐敗の原因となってしまう。使う調理道具はしっかりとアルコール消毒を。

鍋に牛乳と刻んだチーズ、塩をひとつまみ入れ、37℃までゆっくりと加熱。
乳酸菌が活発に活動するのは40℃くらいなのだけれど、反面ブリーチーズの白カビが何度まで耐えられるかがわからないため、完全に直感で37℃まで温める。できれば電子温度計で慎重に測ったほうが良い。

37℃になったら、火を止め、タッパーに移し、部屋のなかで常温で1日放置。
この時はちょうどいい気温(15℃〜20℃)だったので、猛暑の夏であればエアコンの効いた部屋、冬であればタッパー上にカイロを置いておくと良さそう。条件が良ければ、半日でこのようなヨーグルト状になる。


②ここからがチーズの飼育タイム。

この時点ですでに白カビが活発になってきているのか優しいカビ臭がする。
できたヨーグルトを、ざるにキッチンペーパーを敷き半日ゆっくりと漉す。
この時は手ぬぐいで濾したが、色移りなどがあるため絶対におすすめしない。絶対におすすめしない。絶対に。

水分をある程度抜いたら、お茶碗などに新しくキッチンペーパーを敷き、ギュッと押しつめて成形。表面にうっすら見えている赤いものは、カビではなく手ぬぐいの色移り。はぁー、残念。
この状態でさらに水分を抜くため、ラップをせずに冷蔵庫で保冷する。

成形したら、平皿やタッパーに移し替える。
この状態ではまだ表面にカビが生えてはおらず、カッテージチーズのような状態。

白カビの繁殖をよくさせるために、ブリーチーズの表面をこそぎ落として、上に貼り付ける。この状態でラップをして冷蔵庫で保管。毎日1回上下をひっくり返す。

10日ほど経つと、表面にうっすらとフサフサとしたカビの層が見えてくる。ブリーチーズのカビが生きていた証拠。ここからさらに寝かせる。

2週間経った状態。まるで絨毯のような白カビがチーズを覆っている。てぬぐいの色移りなんて跡形も見えない。よかったよかった(よくはない)。
ここまでくるとカビはもはやペット。成長するのが愛おしくてたまらない。

ここで試しに1カット切ってみた。白カビが膜をつくっていて、外見はほぼカマンベールチーズ。
しかし中はまだ熟成しきっておらず、混ぜたブリーチーズが残っている状態。ここからさらに2週間寝かせる。


③1ヶ月の飼育期間を経てついに。

え?画像がうまく読み込めなくてモザイクになってるって?

残念ながら、この結末はお伝えすることができない。

発酵はミステリアスで、美しい。

ミステリー小説のネタバレを見るとつまらないのと同様、発酵も自らの手で育て上げ、そのクライマックスを見届けるところに醍醐味がある。かくも美しいこの結末をたかだか1000pxほどの写真1枚では伝えきることができないのである。

腐るも醸すも己次第。
結末を知りたいかたは是非その目と舌で確かめ、味わってほしい。

いやぁ、しかしあのピリリとした塩味と舌触り。
たまんないなぁ。

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