イギリス人が紅茶好きな理由は、微生物にあった!?アフタヌーンティーの歴史と微生物の意外な関係性
ブラジル人顔負け!生粋のコーヒーホリック菌
コーヒーさび病菌という菌がいる。
ブラジル人もかなわないこのコーヒー大好き菌は、コーヒーの葉に感染するやいなや根こそぎ枯らしてしまうコーヒー農家の最大の宿敵。葉っぱにサビがついたように見えることからコーヒーさび病と呼ばれるようになった。
この菌がはじめて確認されたのが、1860年頃のスリランカ。
当時のスリランカはイギリスのコーヒープランテーションとして、世界でも有数のコーヒーの栽培数を誇っていた、けれどある時コーヒーさび病の感染がコーヒー畑に一気に広まり、壊滅的な被害を受けてしまう。
コーヒーは木を育て直して収穫できるまでに長ければ5年ほどかかってしまうので、「そんなの待てなーい!」とイギリスの紳士淑女はじだんだダンダン。
そんなわがまま紳士淑女をなだめるため、かわりに育てられたのが紅茶。当時は超高級品だった紅茶もこうして栽培量が増えることにより、だんだんと庶民にも広まっていつしかイギリス人はコーヒーなんて目もくれないようになっていった。
ちなみにこのコーヒーさび病はいまでもコーヒーの栽培を脅かす存在。
空気感染するため感染力は絶大で、一回広まるとなかなか手のつけようのないくせものなのである。
コーヒー農家からするとたまったものではないけれど、イギリスにしてみれば紅茶文化というひとつのカルチャーを得ることができた重要なキーマイクローブ。
コーヒーさび病菌がいなければアフタヌーンティーなんて上品な食文化もなかったかもしれないし、お土産屋さんにはあんなに変なかたちのティーポットが置かれることはなかったかもしれない。
この菌の存在を知ったときは「コーヒーさび病菌がこの世にいなかったら、真っ白な歯でティーンネイジャーを謳歌していたのかもなあ、ちくしょう!」と一瞬心の底から本気でコーヒーさび病菌のことを恨みそうになったけれど、かわりにイギリス人がコーヒーホリックになっていたのかもしれないと思うと、結局僕の爽やかな青春時代は茶々けた歯とともに過ごす運命に変わりなかった。