イギリス人が紅茶好きな理由は、微生物にあった!?アフタヌーンティーの歴史と微生物の意外な関係性
イギリスにいた高校時代、「ロンドンのスタバにはアフタヌーンティーないんだ!」と何の気なしに呟いたら、イギリス人に「日本のスタバは抹茶でも点ててるの?」と苦い顔をされたことがある。だけど、そんなことを言いたくなるくらいイギリス人は紅茶好き。
日本人全員が抹茶好きじゃないのと同じように、イギリスにも紅茶が苦手な人がいるはずだけど。いや、いないか…。
少なくとも僕が3年間イギリスにいたときは、飲み物といえば紅茶だった。限界まで煮出されて茶葉が脱色するんじゃないか、と思うくらい黒ずんだ紅茶を昼夜問わず飲んだおかげで、真っ白だった歯は3年間で茶葉の色になった。
茶葉が白くなったのかは知らない(なるわけない)けれど、思い返せばあれは壮大な人体染物だった。
“Where there’s tea there’s hope.(紅茶があるところには希望がある。)”
なんてイギリスの劇作家、アーサー・ウィング・ピネロの名言が残っているくらい、まあ何といってもイギリスといえば紅茶なのである。
でも、実を言えばイギリス人は好きで紅茶好きになったわけではない。
うーん、これもまたイギリス人から反感を買いそうだ。
「イギリス人は紅茶好き!」
どれだけ歯が黄ばもうとも、これは彼らの名誉のために何度でも言う。
もう少し丁寧に言えば、「イギリス人はもともとコーヒーが好きだったけど、ある事情で紅茶をめちゃくちゃ飲むようになった」が正しい。
中学校か高校で真面目に歴史の授業を受けていた人はご存じだろうが、17世紀から18世紀にかけてイギリスでは「コーヒーハウス」が流行していた。要するに、当時の上流階級が通う社交場的な喫茶店なのだけど、その名の通り、コーヒーハウスの売りはコーヒー。イギリス人だってコーヒーが好きな時代があったのだ(今も好きだろうけど)。しかしコーヒーハウスの流行が終わるにつれ、だんだんと紅茶のほうがメジャーになる。
「え、コーヒーは?」と思ってしまうけれど、その理由は単純で、コーヒーがとれなくなってしまったから。
とれないものを飲むことはできないから紅茶を飲みましょと、否応なしに紅茶の需要が高まっていった。イギリスに紅茶文化ができた理由は、社会情勢などたくさんの事情が重なっているけれど、コーヒーが採れなくなったことはその一因に違いない。