放射線にも耐える極限環境微生物、○○から見つかる
最強の生物とは何だろう。
大きさ、スピード、狩猟能力、毒性、繁殖力、数など「強さ」の定義はさまざまだが、これを単純な生命力、つまり「どんなことをしても死なない」と考えると、とたんに目に見えないほどの小さな生物もこの戦いに参戦してくる。
一時期から知られるようになったのが「クマムシ」という、地球上のどこにでもいる体長1mm以下の小さな生物(緩歩動物)だ。
「乾眠」と呼ばれる仮死状態になったクマムシは、-200℃以下の低温や100℃以上の高温、真空あるいは地表の何千倍もの高圧、長期間の乾燥にも耐えることができる。特に驚きなのが人間の致死量の100倍以上の放射線にも耐えられること*1。
このような不思議な生態のおかげで一躍有名になったクマムシ。しかし放射線耐性に関しては、クマムシよりさらに小さな菌の仲間に、それ以上の能力を持っているものがいることをご存知だろうか。
*1 放射線耐性に関しては乾眠時ではなく通常時の方が耐性が高いという説もある。
http://horikawad.hatenadiary.com/entry/20110508
[Horikawa et al. 2006; Watanabe et al., 2006]
「デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)」という微生物がいる。
大腸菌などと同じ細菌の一種で、大きさはクマムシの1000分の1程度しかなく、肉眼では見ることができない。それほど小さな彼らだが、実はある特殊な能力を持っている。
生物が過度な放射線を浴びると、体の細胞内にあるDNAが細かく破壊され、基本的には修復が不可能となり死に至る。しかしこのD・ラディオデュランスは放射線への極めて高い耐性をもち、実に5000Gy*2以上の放射線を浴びても死滅せず、その3倍の15000Gyの放射線でも3割以上が生き残ったという。
これはクマムシよりもはるかに高い耐性であり、ヒトの致死量とされる7Gy程度の放射線では全く変化が見られない。さらにD・ラディオデュランスには破壊されたDNAを自ら修復する能力が備わっており、放射線を浴びてバラバラになったDNAでも12~24時間程度で元の状態に戻してしまうのだ。
*2 Gy(グレイ):1Gyは1kgの物質が放射線によって1Jのエネルギーを受けることを表す吸収線量。X線検査は1回0.001Gy程度。
こんな風に聞くとなんだか珍しく、謎に包まれた生き物のようなイメージを持つかもしれないが、実は地球上わりとどこにでもいて、なぜかパンダの体内から発見されることもある。
これだけでも十分変わった微生物なのに、その発見の経緯もサプライズだった。