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病気を引き起こす有名な微生物10選 | 人類永遠の敵は目に見えない!

病気を引き起こす有名な微生物10選 | 人類永遠の敵は目に見えない!

Naoto Oi

わたしたちの生活にある危険というのは、犯罪や事故、災害といった目に見えるものだけではありません。むしろ、目に見えないからこそ対策が難しい、という意味では病原菌やウイルスによって引き起こされる病気もとても危険なもの。今回は、主に人体に対して悪影響を及ぼす菌と、その症状を10種類紹介します。コロナ禍が騒がれる昨今ですが、ぽっと出のウイルスなんかよりもっと危ない微生物はこの世の中にたくさんいるんですよ〜!

1.サルモネラ菌

発熱や腹痛、下痢、嘔吐など、「食あたり」を引き起こす病原性細菌。食あたりや食中毒というと危険度は低いように感じるかもしれませんが、重篤な場合、脱水による命の危機にもつながる危険な細菌です。世界中に広く分布し、人間の生活圏にも生息しているため、とても身近で危険な病原菌と言えます。毎年世界中で10人に1人は罹るとされ、衛生管理が行き届いていると言われる日本国内でも 2016年〜2020年の5年間で4000人近くの患者が感染しています。菌は基本的に乾燥した環境は好みませんが、サルモネラ菌は乾燥に強いことが知られ、水のない環境でも数週間生存が可能と言われています。同時に、水中でも数ヶ月は生きていけるという特性も兼ね備えています。

2.ウェルシュ菌

サルモネラ菌同様、一般的な食中毒症状を引き起こす病原性細菌。サルモネラ菌との比較として、2016年〜2020年の国内患者発生数は7000人を超えます。ウェルシュ菌は熱にとても強く、100°Cという高温下でも1~6時間も耐えることができるため、生の食材だけでなく十分に火を通したと思われる食品、調理品でも食中毒を起こす可能性があります。さらに50°C以下だと活発に増殖する性質もあるため、例えば煮込み料理などで十分加熱し他の菌がいなくなったところで火が止まり、ほぼ無菌の状態のまま温度が下がった結果、ウェルシュ菌だけが大量に増殖するという食中毒事例が少なくありません。

3.破傷風菌

破傷風菌は比較的どんな土壌にもいるありふれた菌ですが、体内に入ると手足の痺れや呼吸困難、場合によっては痙攣や心不全などを引き起こします。ワクチンの普及していない地域もいまだ多く、世界では年間30~50万人が亡くなっています。小さな傷口からでも体内に侵入してその数を増やすことができるため、日常的な怪我でも破傷風の症状を引き起こす可能性は決して低くありません。また破傷風菌は嫌気性細菌と呼ばれる細菌の一種で、酸素があると増えることができず、普段は芽胞と呼ばれるカプセルのようなものに包まれていて毒性もありません。しかし、動物の体内など酸素に触れない環境になると活性化して毒素を出すようになり、上記のような性質を持つようになります。

4.ボツリヌス菌

この菌も破傷風菌同様、嫌気性細菌と呼ばれる細菌の一種です。さらに、このボツリヌス菌が嫌気状態の時に出す「ボツリヌス毒素」は自然界に存在する中でも最強の毒とされ、1gのボツリヌス毒素で100万人の命を奪うことができると言われています。これは一般的に危険とされているフグ毒(テトロドトキシン)の1万倍近い強さです。しかし、そんな最強の毒を人の体に注射する美容法、医療法が存在するというのですから驚きです。もちろん毒そのものではなくこの毒を元にしたタンパク質ではあるものの、筋肉を弛緩させるという特性から、顔に注射してシワをとったり、あごの筋肉に注射して歯ぎしりなどを軽減させる、加齢とともに引きつってしまう腕や足の筋肉に注射してその症状を抑えるなど、想像以上に幅広い分野で活用されています。

5.溶血性レンサ球菌

あまり聞きなれないこの細菌は、健康な人の腸内や表皮にいることもあり、決して珍しい部類の細菌ではありません。しかしその反面、「人食いバクテリア」という恐ろしい俗称を持っています。人食いバクテリアというのは、溶血性レンサ球菌に感染した際に、体組織の一部が壊死する症状があらわれるため。またこの他の症状としても、手足の痛みなどがあり、悪化すると血圧の低下、臓器不全によるショックなどで発症後数十時間以内に死亡することもあるという危険な感染症です。しかし、感染しても症状が薄い人がいることや、咽頭炎を引き起こす程度の溶連菌感染症と同じ細菌が原因になっていることなどから、まだ発症の根本原因としてわかっていない部分も多く、未然に感染を防ぐことが難しいとされています。

6.ペスト菌

過去3度にわたりパンデミックを引き起こし、当時の文化や社会構造を変えるほどの死者数を出したペスト(黒死病)。総死者数は推定2億人ともいわれ、感染症による死者数では2位の天然痘(推定5600万人)、3位のスペイン風邪(推定5000万人)を大きく引き離して第1位となっています。そもそも病気が菌やウイルスによるもの、という認識がなかった時代であることも大きな要因でしょう。このペストを引き起こすペスト菌は1900年ごろ、アレクサンドル・イェルサンと北里柴三郎がほぼ同時期にそれぞれ独立して発見したと言われています。保菌するネズミなどについていたノミに噛まれることによる感染、ヒトヒト間の飛沫感染がおもな伝播経路とされ、症状によって線ペスト、肺ペスト、敗血症ペストの3つの分類があります。特に肺ペストは発症後24時間以内の致死率がほぼ100%といわれ、極めて危険な菌であることが窺えます。

7.炭疽菌

病気の原因になることが証明された初めての細菌。世界初の弱毒性菌ワクチンの元にもなった、病原菌の歴史をたどるうえで重要な細菌です。炭疽菌に感染すると皮膚に潰瘍ができ、後にかさぶたのような組織に変化します。これだけでは致死率も2割程度とされていますが、肺に入った場合は重篤な風邪のような症状が出て、治療をしない場合9割以上の致死率となる危険な病原性細菌です。また致死率や容易に感染することなどから、生物兵器として研究される対象となることも多く、第 2次大戦中にはイギリスがのグルイナード島という島ひとつを実験場として炭疽菌をばら撒き、長期間に渡ってあらゆる生物にとって生存が難しい環境を生み出しました。また2001年にはアメリカでテレビ局などに対して炭疽菌の入った封筒を送りつけ、5名が死亡するというテロが発生しています。

8.結核菌

結核という病名は、どこかで一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
結核菌は人の免疫細胞であるマクロファージの内部でも繁殖できるという特殊な生態をもち、潜伏期間も半年~2年ほどと非常に長い場合もあり、ある日突然発症するというケースも少なくありません。現代日本ではワクチンの普及や治療薬の普及により、「昔はよくあったらしい」程度にしか感じることもないかもしれませんが、実際は現代でも国内外合わせて年間100万人以上が犠牲となり、世界の死因トップ10に数えられるほど身近かつ致死性の高い病気となっています。WHOは2030 年までに結核流行の収束を目標として掲げていますが、いまだに難しい課題だと感じざるを得ません。

9.赤カビ

わたしたちの身の回りには、青カビ、黒カビなどさまざまなカビがたくさんいます。中にはカマンベールチーズの周りについている白カビのように、食べても害のないカビもいますが、有害なカビが作り出す毒素は人体に入ると腹痛や下痢、嘔吐などの症状のほか、免疫力の低下などを引き起こします。また、Fusarium subglutinansという赤カビは危険な毒素を出すことで知られており、これはアフラトキシンと呼ばれます。アフラトキシンは自然界の中ではもっとも発がん性の高い物質であるとされ、一度に大量に摂取すると急性中毒を引き起こし、継続的に摂取した場合は肝臓がんなどを引き起こすリスクが30倍程度になると言われています。

10.ミュータンス菌

学名Streptococcus mutansと聞くと、いかにも未知の病原菌という印象を受けますが、実は虫歯の原因となる細菌の一種です。口の中は唾液のはたらきで自然と細菌が洗い流されるようになっており、仮に病原菌などが侵入してきてもそう簡単には増殖できません。しかしこのミュータンス菌は口に残った食べかすなどからグルカンと呼ばれる物質を生成します。このグルカンは歯にしっかりと張り付くようになっており、さらにミュータンス菌はそこに住み着いて乳酸をつくるので、その酸の働きにより歯の表面が溶けてしまうのです。そしてさらに内部の神経や血管まで侵食が進み、痛みを発するようになってしまいます。ミュータンス菌は一晩で数千倍の数にも増殖します。食後や寝る前だけでなく、起床後にも歯磨きをすることが予防になるでしょう。

菌や細菌と病気の関係性が証明されたのは、実は19世紀の終わり頃。例えば食事の前には手を洗うと病気になりにくい、といったような現代の衛生観自体もまだ100年ちょっとの歴史しかありません。かつてペストが流行した中世ヨーロッパでは、毛穴からペストが入りこむと考えられ、風呂に入らないほうが良いとされていました。今考えればそんなの不衛生だろ、と思うかもしれませんが、今後もっと研究が進めば、今の常識もさらにアップデートされていくかもしれません。目に見えない危険を避けて通るのは難しいですが、科学の進歩に期待したいと思います。


画像クレジット

1.サルモネラ菌
Rocky Mountain Laboratories,NIAID,NIH Color-enhanced scanning electron micrograph showing Salmonella typhimurium (red) invading cultured human cells.

2.ウェルシュ菌
1974 Don Stalons Magnified 1000X, this photomicrograph reveals numbers of Clostridium perfringens bacteria that had been grown in Schaedler’s broth, and subsequently stained using Gram-stain. Clostridium perfringens is a spore-forming, heat-resistant bacterium that can cause foodborne disease. The spores persist in the environment, and often contaminate raw food materials. These bacteria are found in mammalian feces, and soil.

3.破傷風菌
4.ボツリヌス菌
5.溶血性レンサ球菌
the Centers for Disease Control and Prevention’s Public Health Image Library

6.ペスト菌
Rocky Mountain Laboratories, NIAID, NIH Scanning electron micrograph depicting a mass of Yersinia pestis bacteria (the cause of bubonic plague) in the foregut of the flea vector

7.炭疽菌
U.S. Department of Defense 

8.結核菌
the Centers for Disease Control and Prevention’s Public Health Image Library

9.赤カビ
Terry Price, Georgia Forestry Commission, Bugwood.org

10.ミュータンス菌
Y tambe

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