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食べ物に関わる微生物10選 | 日本人には欠かせない発酵食品たち

食べ物に関わる微生物10選 | 日本人には欠かせない発酵食品たち

発酵食品大国、日本。もはや和食=発酵食品といっても過言ではないほど、「醤油」や「味噌」など和食の基本になる調味料のほとんどが発酵を経ています。そこで今回は日本食に欠かせない発酵食品と、それに関わる微生物をご紹介。普段私たちの食卓に並ぶ料理は、たくさんの微生物の力によってできています。

1.醤油

日本の伝統調味料、醤油。海外から来た人が「日本は醤油の匂いがする」というほど、和食の基礎として欠かせない調味料です。豆と小麦を主な原料とする日本の醤油は味、香りの成分が複雑で、リンゴやバター、コーヒーなどの香りもその中に含まれているそう。醤油の製造には「醤油麹」と呼ばれる麹が欠かせません。この麹の代表的な者はA.ソーエというコウジカビの一種。醤油の中でも生存可能なほど強い耐塩性をもっており、原料となる大豆の中のタンパク質をうまみの元であるアミノ酸に変換してくれます。同じコウジカビでも、醤油蔵によって独自の進化をしており、中には自然界に存在しない種類もあると言われています。高級な醤油として知られる「たまり醤油」の製造法は現代でも伝わり、その製造過程で利用される「A.タマリ」というコウジカビまで存在します。

2.味噌

味噌は醤油と並ぶ日本の代表的な調味料。原料は大豆と麹、塩など、醤油と大きな違いはなく、かつて味噌づくりの最中に出てくる水分をなめてみたところ、とてもおいしかったことが醤油の原型であるとも言われています。「醤油麹」として紹介したA.ソーエは、実は味噌作りでも活躍しています。

3.納豆

日本を代表する「臭い」食品、納豆。糸を引き、悪臭がする、一見すれば完全に腐敗した豆が、ここまで広く受け入れられているというのは、よくよく考えるととても不思議な文化です。納豆はその昔、大豆を藁に包んで運んでいる最中、馬の体温で藁の中にいた納豆菌が活性化し、豆を発酵させてできたものがそのはじまり。その美味しさに上官に献上したため、「納める」という字が充てられたとも伝わっています。納豆菌は枯草菌(バチルス属)の一種で、納豆から分離されたことからB.ナットーと名付けられました。B.ナットーはナットウキナーゼというタンパク質、ビタミンK2、アミノ酸類の生成能力があるほか、あの「ネバネバ」は保水性が非常に高いことから、環境保全の手段に役立てられるのではないかと考えられています。

4.酢

一般的な酢(米酢)は、お酒に酢種(酢酸菌)を入れてつくられます。お酒の中のアルコール分を酢酸菌が食べ、酢酸を生産。この工程を酢酸発酵と呼び、元のお酒の種類によって出来上がる酢の味、風味も変化します。

海外でも同じ工程の食品はあり、例えばワインビネガーはワインのアルコール分が酢酸発酵したもの。酢酸菌は比較的どこにでもいる菌なので、家庭で開封して放置したワインが勝手に酢酸発酵してしまい、いつの間にかとてもすっぱくなっていることも。ちなみに、酢酸菌の一種がココナッツの内部の水分と混ざると膜を張るのですが、これを切り分けたものがかつて大ブームとなったナタ・デ・ココと呼ばれる食品です。

5.日本酒

日本酒は米と麹、水からできるお酒。米に含まれるでんぷんを麹、つまりコウジカビ(A.オリゼー)が糖に変換し、その糖を酵母(S.セレビシエ)がアルコールに変換することで酒となります。これらの反応は段階的にではなく、同時並行で発酵が進みます。このような2種類の発酵段階を持つ工程のことを「並行複発酵」と呼び、日本酒や焼酎、紹興酒、マッコリなどに見られるつくりかたです。米を原料とする日本酒が、フルーツのような芳醇な味・香りがするのは酵母によるものが大きいとされています。日本酒の蔵には「蔵つき酵母」と呼ばれる、酒の製造過程で独自のバランスで住み着いた酵母がおり、この蔵つき酵母こそが味、風味、個性などを酒ごとに変化させる大きな要因であると言われています。

6.かつおぶし

あまり知られていませんが、かつおぶしも広い意味では発酵食品と呼ぶことができるかもしれません。かつおぶしが鰹の切り身からできていることは有名ですが、この切り身を乾燥させる過程で、カビの力を使っているのです。生の鰹の切り身が乾燥したかつおぶしになるまでには、煮沸したり燻したりして乾燥を行うなど、多くの過程が必要。そのなかに「カビ付け」と呼ばれる、ユーロティウムというカビを吹き付ける工程があります。このユーロティウムは乾燥を好み、鰹の身の表面に付着すると、中の水分を吸い上げて成長するとともに、アミノ酸などを放出します。こうして鰹の身は芯まで水分を完全に吸収され、うまみ成分たっぷりの世界一硬い食品、かつおぶしとなるのです。

7.ぬか漬け

日本には、塩漬け、酢漬け、味噌漬け、麹漬けなど、地方ごとにさまざまな漬物文化が発達しています。もちろん中国の搾菜や韓国のキムチなどもあるので日本独自のものというわけではありませんが、湿潤な気候での長期保存食といえば日本が得意な分野であることに間違いありありません。なかでもぬか漬けは少し特殊で、他の漬物が乳酸発酵、酵母による発酵と大別しているのに対し、ぬか漬けは乳酸菌、酵母、酪酸菌などを合わせた複雑な発酵によって出来上がります。ぬか床の中には、多種多様な微生物による絶妙なバランスのコミュニティができているのです。成熟したぬか床の中には、善玉乳酸菌とされるビフィズス菌が大量に生息しており、その密度はヨーグルトを超えるとも言われています。

8.くさや

さて、ここからは少し特殊な食品が続きます。まずは伊豆大島や八丈島などの名産とされる干物「くさや」。

アジなどの切り身を「くさや液」と呼ばれる液に漬け込んでから干物にすることで、強烈な匂いとともにうまみを凝縮させます。かつて塩も真水も貴重だった島々で、塩を継ぎ足しつつ何度も魚を漬け込むことで、独特な匂いのくさや液ができたんだそう。このくさや液にはC.クサヤという名前そのままの細菌がいて、その活動により酪酸や酢酸、アミノ酸などが生成され匂いとうまみのもととなっていると考えられています。、一見腐敗しているかのようにも思えるくさや液。食中毒の原因となる菌を分解する効果もあり、優れた殺菌効果があるという研究結果も出ています。

9.なれずし

名前に「寿司」とついていますが、「熟れ寿司」とも書くように、魚を米や塩に漬け込み熟成させたもの。その姿は一般的な握り寿司や巻き寿司とはかなり異なっています。乳酸発酵によりうまみや栄養が増えますが、言うなれば「魚の漬物」のため、独特な香りも特徴で、琵琶湖名物の鮒寿司が有名です。通常数日から1週間程度熟成させたものを「生なれ」、数ヶ月〜数年熟成されたものを「本なれ」とよび、長期間保存したものは魚も米もほぼ原型をとどめておらず、ヨーグルト状の液体に近いものとなっています。そもそも生魚の保存食というもの自体かなり聞きなれないものですが、中には 50年、100年貯蔵といった本なれずしもあるというから驚きです。

10.ふぐの子のぬか漬け

発酵食品文化が濃い日本でも、特に珍味とされる「ふぐの子のぬか漬け」。本来猛毒とされるフグの卵巣を3年ほどかけて塩漬け・ぬか漬けにすることで解毒し、食べれるようにしてしまうというのだから、日本人の食への探究心には驚かされます。ちなみにフグ毒、テトロドトキシンの致死量は3mgと言われ、自然界では最強格の毒です。その毒がたっぷり詰まった卵巣は、いわば毒の塊のようなもの。これを食べたいと考えた人も、食べるために試行錯誤した人もすごいですが、何より最終的に美味しく仕上がっているというのも不思議です。しかもこの解毒の原理が、科学的には解明されていないというのもまた驚き。長い貯蔵期間の間に外部に毒が拡散することや、ぬか床の中の乳酸菌による発酵で毒が分解されるというのが有力な説とされているようですが、確証まではいたっていないそうです。

今更ですが、発酵と腐敗は「人間に有益かどうか」という点でしか違いがありません。ここに書いた調味料、食品、料理の中にも「放っておいたらたまたまできた」という原点を持つものも少なくないのではないでしょうか。日本は温暖湿潤な気候と豊かな植生のおかげで、発見される微生物の種類も多いと言われています。もしかしたらこれを読んでいる今現在も、どこかに放っておかれている食材と未知の微生物が出会い、新たな発酵食品ができあがっている最中かもしれません。

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