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微生物図鑑【micspedia】#007 ブフネラ アフィディコラ

微生物図鑑【micspedia】
#007 ブフネラ アフィディコラ

#007

ブフネラ アフィディコラ 

Buchnera aphidicola

アブラムシの体内にある菌細胞(bacteriocyte)という特別な細胞の中にのみ存在する共生細菌。

アブラムシがタンパク質をほとんど含まない植物の維管束液のみを餌に生きていけるのは、この細菌がタンパク質合成に必要な必須アミノ酸を供給してくれるから。

エンドウヒゲナガアブラムシ(Acyrthosiphon pisum)は、春先の道端のカラスノエンドウやシロツメクサにごく普通にみられるアブラムシ。他のアブラムシ類と同様に、共生細菌Buchneraなしでは生きていけない。

アブラムシ類は世界から約5000種が知られるが、ほぼ全種がこの共生細菌を保有している。この共生細菌の起源は1億年以上前に遡り、現生のアブラムシ類の共通祖先から連綿と受け継がれ、密接な共生関係を築いてきたと考えられている。

系統的には大腸菌に比較的近縁だが、ゲノムサイズは大腸菌の6分の1程度で、長大な年月にわたる共生進化の過程で大部分の遺伝子を失い、もはや宿主体外で生きていくことはできず、培養困難である。

上図は、エンドウヒゲナガアブラムシの菌細胞の組織切片像。細胞質中の共生細菌Buchneraを免疫組織化学染色により褐色に、細胞核をヘマトキシリン染色により紫色に可視化した。無数の直径2~3 mmの球菌が細胞質を埋めつくしている。アブラムシの体内で初期胚もしくは卵細胞に伝達され、宿主の生存に必須で、自らも宿主の体外では生存できない不可分の必須共生関係にある。


photo&text: 産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 生物共生進化機構研究グループ 深津武馬 主席研究員

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