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体の洗いすぎは肌トラブルの元? | 抗菌、除菌、殺菌…美容と微生物の関係性

体の洗いすぎは肌トラブルの元? | 抗菌、除菌、殺菌…美容と微生物の関係性

Naoto Oi

世の中に溢れる抗菌・除菌・殺菌グッズ。特に最近は菌=汚い、病気や害のもとというイメージが強まっている。化粧品やボディケア用品に「体臭や肌トラブルのもととなる雑菌の増殖を抑制し〜」なんて謳い文句が書かれているのを見かけたことがある人も少なくはないだろう。キレイ好きな人、美容に気を使っている人ほど「雑菌」は憎き敵であり、日々さまざまなボディケアを欠かさない。手洗いや歯磨きを何分もして、化粧水やクリームを何層にも塗り込み、朝夕の風呂を欠かすことなんてあり得ない。

たしかに、不快な体臭には体の表面についた菌が汗や皮脂を食べた時の代謝物のにおいも含まれているし、ニキビや吹き出物も毛穴に菌が入り込んで炎症をおこすことが一因にもなっている。外から帰ってきて手を洗うのは病気の対策にももちろん効果的だし、風呂に入れば体の表面についた大抵の菌は汚れと一緒に洗い流される。しかしながら、こういった清潔・美容のための行為も、必要以上に行うとかえってトラブルを引き起こす要因にもなるのだ。

われわれ人間は、体内や体表面で無数の菌と共生している。その数は100兆を超えるとも言われ、人間の体を構成している細胞の数(約37兆)よりもはるかに多い。雑菌を目の敵にしている「キレイ好き」なかたがたにはだいぶショッキングなことかもしれないが、紛れもない事実である。そんな菌たちは大きく「腸内細菌」と「表皮常在菌」の2つに分類される。「腸内細菌」は人間の小腸の中に住む菌たちの総称で、食物の消化や吸収の手助けなどをしてくれている。非常にざっくり言うと、腸内細菌の働きを活性化させることで体の調子も良くなることが近年わかってきたが、これはまたどこかの機会に話すとしよう。

さて、聞きなれないかもしれないが、もう一方の「表皮常在菌」も健康な体を維持するためには欠かせない菌たちだ。表皮常在菌は読んで字のごとく体の表面に日常的に住み着いている菌のことを指し、表皮1cm²に数十万〜数百万もいるといわれている。特に「表皮ブドウ球菌」と呼ばれるもっとも一般的な常在菌の一種は、皮脂などを食べて脂肪酸を生成し、常に人の肌表面を弱酸性に保つ働きをする。これは外部からやってくる悪玉菌や病原菌の侵入を防ぐバリアの役割を持っている。他にもアクネ菌や黄色ブドウ球菌といった菌が表皮常在菌の代表的な種として挙げられる。

しかし、実はアクネ菌はニキビの原因に、黄色ブドウ球菌は傷の化膿や感染症、さらには食中毒の原因になったりもする。では、そんな危険な菌はまとめて排除するべきだろうか?

表皮常在菌に限らず、菌の面白いところは他の菌との関係によって人間に有益にも害悪にもなりうるということだ。

アクネ菌や黄色ブドウ球菌だけでなく、例えば腸内細菌として一般的な「バクテロイデス・フラジリス」という菌は基本的に「日和見菌」と呼ばれ、通常は益も害もない菌とされている。しかし、腸内環境が悪化すると毒性を持つようになり、大腸菌が生成する物質と組み合わさることで発ガン性を高める可能性があることが示唆されている。

その一方で、腸内の炎症の原因となる菌(ヘリコバクター・ヘパティカス)の働きを抑制する物質を生成する能力も持ち、腸内環境の保全に役立っているとされる。

このように人間と共生している菌には病気の原因となるようなものも含まれているが、だから排除したほうがいいというわけではなく、他の菌とのバランスをとることが重要ではないかと考えられる。悪玉菌も善玉菌もまとめて除菌してしまえば、当然そのバランスが崩れる可能性も高まる。そうなれば、外部からの悪玉菌が体にとりつきやすくなったり、本来人間の体を守ってくれる菌が逆にトラブルの元になる可能性も0ではない。「キレイ好き」が祟って病気や怪我の悪化につながるのは本末転倒だ。「雑菌」と一括りにしてしまうのではなく、うまく付き合っていく方法を考えるべきだろう。

表皮常在菌との正しい付き合い方を知り、そのバランスを保つことができれば「抗菌・除菌・殺菌」よりも安全・安心に健康や清潔、あるいは日を保つことにつながるかもしれない。「キレイ好き」な人にこそ、ぜひ菌との友好的な関係を築いてほしい。

出典

https://www.sciencemag.org
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-02/jhm-bpc013118.php
https://www.eurekalert.org/pub_releases_ml/2018-05/aaft-4043018.php
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/27/4/27_203/_pdf/-char/ja
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